独立したファイナンシャルプランナー(FP)の最大の課題は営業
ファイナンシャルプランナー(以下、FP)の柴沼直美です。FPとして活動して10年ほどになりますが、FPに限らずフリーランスの人に共通の課題は「集客=営業」ではないかと思います。よほど知名度のある方や、すでにステイタスを確立されている方はごくわずか。筆者も活動を開始してからも今も同じようにこの課題に日々悪戦苦闘しています。今日は、この集客について、成功体験や失敗体験をお伝えしようと思います。
FP技能検定試験に合格するのはスタートライン
資格試験に合格すると、バラ色の将来が開ける、などと一瞬は思ってしまうのではないでしょうか。特に、勉強をするにあたって学校に通ったり、通信教育を受講した方などは経験がおありでしょうが、学校が合格祝賀会を開催してくれて、はじめて一緒に勉強した仲間が一同に会する場に足を運んでみると、皆さん達成感で興奮し仕事と勉強の両立にどれほど苦労したかなどといった武勇伝を披露しあって、実に前途洋々の雰囲気を味わうことができます。
しかし、その雰囲気に酔いしれるのはほどほどに切り上げて現実に戻らなければなりません。それだけたくさんの合格者仲間がいるということは、ある意味、仕事を取り合うライバルがそれだけいることになります。
合格した時点から営業は始まっている
最初にやるべきなのは、そういった合格者の集会ですでにご活躍の先輩方のプロフィールを頭にいれることです。ここで、猪突猛進に自分を売り込んでも、先輩の専門領域ともろ被りである可能性がありますから要注意です。例えば先輩といっても合格したのは仮に1年前で、その方は不動産会社での実務経験が3年だったとします。一方、あなたの実務経験は10年だったとした場合、どちらのほうがクライアントに適切にアドバイスができるかというとおそらくあなたのほうでしょう。その場合、下手に名刺交換しても先輩に警戒されることになり、後々やりにくくなります。自分のプロフィールは軽く、控えめに紹介するにとどめることが大事です。
FPとして実際に営業したときの失敗事例
こうやって、一通りFPはどんな人がいるのか、という雰囲気を味わったあとはいよいよ集客に向けて本格稼働です。筆者も思い当たることは片っ端からやりましたが、どれも失敗に終わってしまいました。典型的な取り組みとして、誰もが思いつくホームページを開設して、お問合せの窓口を作る、ブログを併設して読んでもらう、メールマガジンを配信する準備をするなどSNSでのインフラを構築しました。しかし、思ったほど集客効果はありませんでした。
なぜこれらが失敗したのか思い起こすとネット社会の落とし穴にはまったからかと思っています。そもそも、私はFPとして誰からも認知されていないのです。資格取得をされた方はとかく誤解しがちですが、例えば保険会社に勤めていた、FPの資格を取得した、だから資格試験で勉強したことと実務を活かして独立すればクライアントに適切なアドバイスができると考えるのは間違いです。ごく普通の昨日までサラリーマンをしていた人の専門分野や経験など、どうやっても一般の人にわかってもらうことはできないのです。ところが、なまじ経験があるために、その自信=プライドが邪魔をして最初の第一歩をすっ飛ばしてしまうのです。
FPとして営業をするための第一歩
最初の第一歩ってなんでしょう?それは、自分は『なにもの』かをわかってもらうことです。FPといっても、ご存知のように守備範囲は広く、それぞれに得意分野があります。それ以前に、初歩的な質問をしても大丈夫か?相談しやすいか?自分と相性があうか?など、知識ではなく、人間としてのアピールポイントをわかってもらうことです。
筆者が実践して比較的うまくいったのは、異業種交流会での営業です。「自分は○○」と一言でいえるようなキャッチコピーを用意して、異業種交流会に行ってビジネスチャンスを広げたり、集客ノウハウを身に着けることができました。なぜ異業種交流会か?そこにはFPのことを何も知らない人がたくさんいるからです。そして、2つの考えがありました。1つ目に、「全然知らない人に自分という人間性をアピールする」こと、2つ目に「うまくいけば、相手と思わぬコラボレーションができるかもしれない」という考えがあったからです。
一見、この方法は時間がかかりますし、大勢の人ととにかく会わなければはじまらないので、効率が悪いと思うかもしれません。でも、多くの人に自分という人間を知ってもらい、ビジネスチャンスの確率を上げる(うまくいく相手と巡り合う)ためには、分母を増やす(できるだけ多くの人と会う)ことが必須なのです。これもヒューマンスキルを上げる経験と思って開き直って気長に取り組みましょう。多くの人と会うことによって、FPの中での自分の強みはこんな風にアピールすれば集客できるとか、この人とコラボできそう、とかいった青写真が見えてきます。いくらネット社会といっても、仕事場でPCに向かって時間を長く使ったところで生身の人間とのコミュニケーションをとることなしにビジネスを前に進めることは絶対できません。なまじSNSが普及したがゆえに、スマホやPCがあれば世の中の動きがわかると勘違いしてしまいがちです。
いつの時代も変わらない役に立つ営業スキルとは
よく「紹介」でビジネスの機会を得る方法が最も効率的という話を聞かれるかと思いますが、これはどんな時代でも変わらないと思います。なぜなら、どんなビジネスであっても結局は知識よりもヒューマンスキルによって成立するからだと思います。
「私はFPの資格試験にかろうじて合格しただけで、あまり実務経験も豊富ではないし、自信がない」という弱気の発言をしていた人のほうが、クライアントとの信頼関係をしっかり構築しているというのがまさにその例だといえるでしょう。クライアントの悩みに寄り添うことができる不変のスキルを磨けばおのずと集客の結果はついてくるというのが経験を通じて得た実感です。