こんにちは。ファイナンシャルプランナーの柴沼直美です。
今回は、必ず受けるご質問の1つとしてFPの資格を取得しようとするならば、1級~3級のの国家資格と3級、AFP、CFPとなっている民間資格のどちらがいいのかについて述べたいと思います。
FP資格には国家資格と民間資格がある
1級~3級はファイナンシャルプランニング技能士というのが正式名称の国家資格です。学習のレベルを当てはめると、1級≒民間資格のCFP、2級≒民間資格のAFPに相当します。試験内容もほぼ同じようなもので、特にAFPと2級については全く同じ問題です。
試験合格後ですが、AFP、CFPという民間資格は2年に1度、更新手続きをしなければならず、更新のためには会費に加えてFP協会が定めた継続教育を受講しなければなりません。これに対して国家資格は合格してしまえば、それで終わりです。永久に有効で、会費を支払う必要も継続教育を受講する必要もありません。
このように書いてくると、継続教育や資格更新の手間や費用面で民間資格のほうが面倒だしいいことはないと思われるでしょう。ですが、筆者は個人的には、民間資格をとっておいて損はないと思います。その最大の根拠はFPという資格の性質によります。
FPの勉強する分野の一つである税務は毎年改正されるので、知識の更新が不可欠
FPは再三お伝えしている通り、お金にまつわる全般に及ぶ知識や技能が求められ、現在6分野に分かれています。この6分野ほぼすべてを右から左へ横断させている軸が税務になります。独立してタックスプランニングという課目はありますが、ライフ&リタイヤメント(年金と住宅ローン)、リスク(保険)、不動産、相続・事業承継、金融資産設計(金融商品と経済)のすべてにかかってきます。
そしてこの税務に関しては、試験のために勉強するのは全体像をつかむことができるため有意義ですが、合格後、まったく触れないでいると、あっという間に知識は陳腐化してしまうのです。
税務に関しては、毎年年末に税制改正大綱という改正の大枠が決まり、その後詳細について修正が加えられ、少しずつ改正されていきます。したがって、毎年最低でも改正項目については理解し、自分の知識を更新しておかないとクライアントと話ができなくなります。ビジネスはシビアです。「この人はファイナンシャルプランナーと名乗っているが、知識は○年前のまま」と評価されてしまったら、挽回するチャンスはもうありません。
人間というのは、一度痛い目に一度会わないと学習しないものだと言われますが、クライアントから顧問料をいただいて仕事をすることを決めたのであれば、痛い目に会わないように自分で努力しなければならないと思います。
民間資格の継続教育で否応なく最新の知識に更新できる
これを強制的にしくみとして確立しているのが、民間資格AFP、CFPでの継続教育です。継続教育の中身については詳述しませんが、ある一定の基準を満たさなければ資格更新ができない(AFP、CFPとして名乗ることができなくなる)ことになります。(詳しくはこちらをご覧ください。日本FP協会:継続教育と資格更新制度の概要)
更新の仕方としては、FP協会会員であれば送られてくる雑誌に閉じこまれている問題に取り組むという方法が手軽ですが、FP協会やSG(スタディグループ)が開催する勉強会やセミナーに参加するという方法もあります。こちらは、会員ホームページで興味のあるテーマ、アクセス可能な場所で開催されているセッションを選んで出席し単位を付与してもらうものです。
継続教育方法は、問題に取り組むことと勉強会やセミナーに参加することのどちらがいいか
両方とも一長一短あって、雑誌(FPジャーナル)に閉じこまれている問題に取り組むことで獲得できる継続教育単位取得制度は、時間を選ばずいつでもどこでも学習することができます。しかし通信教育ですから、ほかの会員との意見・情報交換はできません。他方、勉強会やセミナーに参加することで新しいコラボレーションの機会ができたり、ナマの情報を得ることができたりするというメリットは貴重な経験となりますが、費用と時間がかかります。
FPに限らずビジネスは、効率やコストパフォーマンスだけを追求するものではないですよね。時には座学で効率よく知識を吸収すること、時には自分にもっていない知識や経験を持っている人との出会いによって得られる自分のFPとしての厚み・奥深さを極めること、この両方がバランスよく積みあがっていくことによってクライアントからの信頼度も仕事の幅も広がると思います。それぞれの良さと皆さんがおかれている制約条件(仕事の都合で参加できる、できないなど)を考え合わせて、50:50で使い分けていくのが1つの理想の形かなと思います。
いすれにしても、継続教育は必要ないし国家資格だからこちらのほうがステイタスが高いと安易に考えないことです。少なくともFPであれば、或いはFPと親交のあるクライアントであればペーパードライバーの国家資格保有者なのか、知識と技能を更新しているFPなのかは、2~3分話をすればすぐにわかると思います。見た目のメリット、デメリットにこだわらず、FPとして活動していくには、資格を取得した後どうすればいいかを考えたうえで今、ご紹介したことを参考に決めていただければと思います。